専門家講座

専門家の連載コラム

短期講座

あなたでもできる企業信用調査と与信管理(2)

それではお待たせいたしました。前回の講座に続き、あなたでもできる企業信用調査の概要をご案内いたします。この講座を読んで実践していただくことにより、安心して新規取引や、既存の取引先の与信限度額〔取引限度額〕の再設定を行うことができますのでぜひお役立てください。

1.インターネットを使った調査
・会社のホームページを探す
インターネットの普及が進み、多くの会社が自社のホームページを開設しています。開設されているホームページには会社概要、本店の住所、経営者の名前、沿革など様々な情報を入手することができます。また、社長のブログなど経営者自らの言葉が書かれている所を読んでみると、書いた人物の趣味、趣向、思想、そして素行や品性までが自然と見えてきます。
契約交渉をするに当たりこれらの情報が有利に働くことがありますので押さえておきたいところです。また、直接会社のページを見つけることができなくても、検索エンジンで会社名を検索してみると、別の会社のホームページに関連会社や系列会社として記載されていたり、ある会社のホームページ内の仕入先や販売先、代理店、系列会社、特約店、外注先などの一社として記載されていることがあります。このように外部、周辺から辿ることにより、その会社の取引状況の概要が見えてくることもあります。
・匿名掲示板を見る
確固とした根拠のあるものではなく、中にはふざけ半分に書き込まれたものもあるので一概にすべてを信用して鵜呑みにはできないのですが、〔巷にはこのような見方をされている側面もある〕と、ひとつの参考事項として捉えることができる情報も載っていることがありますので抑えておきましょう。

2.図書館で情報収集する
・電話帳に載っているか確認する。普通に営業を行っているのであれば載っていてしかるべきであり、逆に載っていなければ不自然です。
・ゼンリンの住宅地図に載っているかを確認する。その地で何年か営業を続けていれば載っていてしかるべきです。載っている場合でもどのような場所に所在しているのかがポイントになります。
・地元の商工会議所が発行している商工名鑑を確認する。その地で根を張って営業を行うのであれば商工会に加入しているはずです。
・地元の新聞社や企業研究会が発行している会社要覧・企業年鑑に載っているかを確認する。これらの書籍にはその地で中堅以上やある程度の業格がある会社をピックアップして掲載されています。
・その他にも郷土資料、過去の新聞、有価証券報告書、紳士淑女録などが置かれていることもあるのでそれらも参考にしてください。

3.法務局で登記内容を分析する
商業登記簿編
商業登記簿は〔要約書〕と〔証明書〕があり両方とも法人として会社を構成する基本的な要件が記載されているものです。いわば個人の戸籍謄本の会社版といったところです。
とりあえず現状の大体の確認だけで良いのであれば〔要約書〕の取得で間に合うはずですが、調査を目的に、より多くの情報が欲しい場合には〔証明書〕を取得するのが良いでしょう。さらに言えば商業登記簿からその会社の資本金や、目的、代表者が分かれば問題無しという訳ではないはずです。会社も人間と同じで、現状は真っ当に見えてもその会社が以前どうであったかも重要なポイントです。真っ当な会社であるか否かは〔要約書〕や〔現在事項全部証明書〕だけでは到底判断できないので、〔履歴事項全部証明書〕の取得を行います。起業してから何年も、何十年も経過している会社は、その会社の変遷に合わせて変更登記が行われています。それを調べることで、その会社のおおよその素性が見えてきます。怪しい会社はそれなりに訳ありの変移を辿っているので〔履歴事項全部証明書〕は登記の移り変わりを確認でき、怪しい所を見破ることができますので必ず取得しておきたいものです。

怪しいケースとして
・商号が意味も無くコロコロと変わっている。
極端なケースとして、乗っ取られたとか、買収された、休眠会社を買い取ったなどがあるので気をつけておいて下さい。
・本店登記地が転々としている。
通常で考えても分かるように一箇所に根を張って営業している会社と流れ流れで転々としている会社とではどちらが信用できるか言うまでもありません。
・事業目的が異常に多い。
実際の事業規模に対してまるで商社並みの営業目的があるのは不自然です。本業が何か分からないのはいわゆる〔何でも屋〕もしくは〔整理屋〕というケースもあったりするので注意が必要です。
・役員が大幅に入れ替わっている。役員に〔解任〕と記載されたものがいる。
同族者で運営されているいわゆる世襲制なのか、実力主義の経営体系なのか、役員欄を見るとおよその察しがつくのである。役員が大幅に入れ替わっていたり、役員欄に〔解任〕と付記されている場合は内紛があったことは否めないのである。
・資本金が減額している。
悪いことではありませんが、不良債権処理に充当しているケースが多くあります。不良債権などの懸案事項にうまく充当処理できているかが問題です。
・破産手続きの登記が付記されている。債権譲渡の登記が付記されている。
手を出してはいけない末期症状の会社です。倒産手続き中の会社と取引など、間違ってもしないように気をつけてください。

以上商業登記簿を見るだけでも、ある程度、会社の様子が見えてくるものです。また、法務局で申請しても商業登記簿を取得できないケースとして、

1.本店が別の場所で管轄する法務局が違う
2.すでに会社が倒産されている
3.実質的に存在しないインチキな会社

がありますのでご注意ください。


不動産登記簿編
不動産登記簿は〔要約書〕と〔証明書〕があり、その不動産、土地と建物がありますが、その面積、所有者、権利関係などを記載した帳簿です。
不動産は各方面から融資を受ける際に信用度を計る一番の材料になります。企業信用調査では、〔全部事項証明書〕を取得し、不動産の有無だけではなく、所有する不動産の状況に不自然な点が無いかを調べることが重要です。チェックポイントとして所有不動産はあるか、会社の所有か、代表者の所有か、取得時期は?不動産価値は?担保設定状況に問題はないか?等です。
決算書は粉飾できますが、不動産登記簿は粉飾できません。つまり、不動産登記簿はその不動産を所有する者の経済の実態をほぼ示していると見てよいので必ず取得しておきましょう。

senmon080415.gif


上記の土地の〔全部事項証明書〕を見ながら確認しましょう。
それでは順に表題部から見ます。表題部はその土地や、建物の概要が記されている項目です。先ず、対象となる不動産の所有者を確認します。法務局内にあるブルーマップに記された所在地と出された登記簿の地番に間違いが無いかを確認し、その本店や工場が会社や経営者の所有か?代表者の自宅は本人(親族関係)の名義か?などを確認します。いずれも全くの他人名義で借用物件では、単に何も資産の裏づけがない会社と見るしかありません。
また、土地や建物を(持ってない)より、(持っている)の方が良いのですが、持っている状況も肝心です。
借金だらけで(不動産を)持っているより借金も無く(不動産を)持っていないほうが環境としてみた場合まだ良いとも言えます。そこは後述の担保余力を算出して与信度を判断しましょう。
続いてチェックポイントとして地目があります。
ここでは、田、畑、宅地、原野、山林、雑種地等の種類があります、宅地は一般的な公示価格と同程度の地価評価ですが、田、畑などの農地は取引や用法に農地法の制限があり実質的に二束三文の値打ちしかないので覚えておきましょう。

次に、甲区を確認します。甲区はその不動産が誰の所有物件であるのかを示す項目です。
留意しなければならない部分として、一つ目は(登記の目的)の項目に差押仮差押の記載がある場合です。主に税金の滞納などに伴い都道府県や市町村が設定したり、債務不履行により一般の企業が設定するケースがあります。また、更に悪いケースとして、競売開始決定や破産、予告登記などの記載があるものがあります。
二つ目は(原因)の項目です。売買、贈与、相続、交換、代物弁済、財産分与、などがありますが、譲渡担保と付記されている場合は最も警戒しなければなりません。これらの状況として一定期間内に債務を完済できれば返還されますが、完済できなければ債務額と譲渡担保されたものとで清算されることになります。これらは、市中金融業者(いわゆる街金)などが債権保全の手段として設定するケースが多いからです。

そして、乙区は担保状況が示されている項目です。最善のケースはこの乙区の欄に記載が無く、空白の状態であることです。その不動産がどこにも担保として提供されておらず綺麗さっぱり無傷の状態を示しています。資産背景が無傷の会社は、倒産の危険性が少なくほぼ無借金経営であることが予測されます。仮に借金があっても預金担保の範囲内でおさまっていると思われます。
悪いケースとしては、根抵当権設定が地価評価額と比べて異常に大きい場合や市中金融業者(街金)や個人名(闇金も含む)などの担保設定がある場合、さらには銀行から信用保証協会又は整理回収機構などに債権譲渡されている場合があります。いずれも正規の金融機関ではない第三者からお金を借りている証拠です。一概には言えませんが、銀行から借入れできなく切羽詰った状態であると推認できます。

ここまで確認できれば、次に不動産評価額を算出して担保余力を推測し、危険度を測りましょう。

現時点での不動産の評価額と、効力のある担保設定の評価額を対比してみれば、今その不動産が担保として使え、新たな融資を受けることが可能かどうかを推察することができます。その為にはその担保となっている不動産がどのくらいの値打ち(評価額)があるのかを知らなければなりません。
ここで簡単な算出方法をお教えいたします。

保有する不動産(土地)の総平米数 × 実勢価格 = 評価額

地価評価額は実勢価格を元に評価するのが望ましいのですが、大差は無いので簡単な方法として市町村の情報センターや図書館などで発表されている路線価格や公示価格を元に計算します。
そして、出された評価額をこの計算方法で算出すると担保余力になります。

評価額 - 現状の担保設定の総額 = 担保余力

担保余力は、後どのくらい資金調達できるのか、という目安です。
どれくらい事業展開上での資金を投下できるのか、という見方もできますが、悪い見方では、焦げ付きなどの事故発生に対してどれだけの抵抗力があるのかという値にもなります。これらを知っておくこと(与信管理)は健全な企業経営を行ううえで重要な勘定科目となっておりますのでみなさんもこれからあるかもしれないまさかに備えてはいかがでしょうか?

この企業信用調査の概要の続きはまた次回にお届けいたします。

第41青経塾 長坂祐樹